東京都庭園美術館で『舟越桂 夏の邸宅』展を見ました。
コムデギャルソンや小説『永遠の仔』の表紙などで舟越氏の彫刻を見て「素敵だなぁ」と思っていて、今回はドローイングなども展示されるということだったので、ぜひ見たいと思っていました。
結論から言えば、むちゃくちゃ良かったです。
彫刻は物憂げで寂しげで、でも凛としていて清らかで。
色のトーン、彫り残しの絶妙さ、形態のセンス、どれもすごく好きでした。ドローイングはどちらかというと力強いのに、それが彫刻になると繊細さと美しさがグーンとアップするのです。
庭園美術館は皇族の古い洋館をそのまま美術館にしていますが、そのクラシックなアールデコ装飾が彫刻と非常にマッチしていました。
ライブラリーに佇むメガネの中年男の彫刻。バスルームには白さ際立つ美しい女性の彫刻。
どれもその部屋に置かれることがあらかじめ分かっていたかのように違和感なくそこにいました。
タイトルは『夏の邸宅』ですが、晴れ渡った真夏の昼間より、今日みたいに湿度が高く陰鬱な雨の日の方が作品の雰囲気に合ってるように思いました。
ミュージアムショップ近くで作品制作過程のVTRを流していました。私は勝手に舟越氏を繊細そうな痩せた人…と想像してましたが、気さくで明るい、ダンディーな人でした。
リアルな瞳は義眼を使ってるのかと思いきや、大理石に自分で描いて作っていました。
(そりゃそうだよなぁ)
濡れた瞳を表現するために10回以上も透明塗料をコーティングしてたり、瞳の微妙な角度、視点の離れ具合、腕のわずかなふくらみなど、さすが芸術家、納得いくまで細部にこだわって、1作品に3ヶ月くらい費やしていました。リアルすぎず、かつリアルから離れすぎずに作っているとも言っていました。本当にそのさじ加減がすごいと思います。
作品を作る前にはいつでも「今回は失敗するんじゃないか」と思うことや、前にうまくいった手の形は「偶然できたんだっけ、神様が教えてくれたかな」などと言うところなどは、何ら私達と変わらないのでした。
でも「偶然も才能のうち」とか「続けていくためには、やり続けなきゃいけない」とか「続けてると常に自分の中で新しい発見がある」など成功してる人ならではの説得力ある言葉もありました。
ちょっと怖いけど美しい…そんな作品を私も作れたらいいなと思いました。
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