今日は上野で2つの美術展を見ました。
1つは『フェルメール』展。
謎多き画家・フェルメールが生涯で残した絵はわずか三十数点。
そのうちの7点(5点は日本初公開)が日本で一度に見られるというのですから貴重だということで、連日テレビや新聞で特集され、かなりの混雑ぶりだと聞いていたので、朝9時の開館と同時に入りました。
おかげで、ゆったりと見ることができました。
もちろんその7点じゃ展示は成り立たないので、そこに行き着くまでにフェルメールと同じオランダ・デルフトの画家の絵を多数見ることになります。
風景とか人物とか、どれも見たまま写実的に描かれているのかと思いきや、いらない柱を排除していたり、存在しない門を描いていたり、結構好き勝手にアレンジしているのでした。
まぁ、記録用じゃないんだから、それでいいんだよな…と思いました。
こういったデルフトの画家たちの絵も良いっちゃ良いんですけど、フェルメールのコーナーはやっぱり全然違います。他の画家たちの絵はやたら緻密だったり、光の当たり方や顔の表情・場面設定などに意図的なものを感じたのですが、フェルメールの絵にはそういったものがありませんでした。
輪郭を程よくボヤカしてたり、部分的にあっさり描いていたり、丁寧に描いていたり。それがかえってリアルさを出していて、見る者に息苦しさを与えません。
そして光の天才画家と言われるだけあって、光の印象が強烈。でも自然。他の画家作品とは一線を画していました。
私は風景画の『小路』が好きです。↓
専門家によれば、この絵には創作的な操作がいろいろ加えられているらしいのですが、そんな風にはとても思えない自然な構成で生き生きとした生活感が感じられます。
続いて、『ヴィルヘルム・ハンマースホイ』展へ。
今回初めてこのデンマークの画家の存在を知ったのですが、この↑後ろ姿の絵にものすごく惹かれ、ぜひ見たいと思っていました。
そして見て、ものすごく好き…!と思いました。
抑えられた色彩、ぼんやりした輪郭、余計なもののない静寂な空間。どれも19世紀末に描かれたとは思えない新鮮さ。
お城の絵に大勢いるはずの人を全く描かなかったりしているので、「廃墟のよう」と解説されていましたが、私にはそう見えませんでした。むしろ朝の光に包まれている穏やかな絵に見えました。
グレートーンだからといって、一概に陰鬱とか寂しいとかで片付けられるのは違うよな、と思います。
彼の絵は色鮮やかではないけれど、タッチや題材からは安定した精神状態を感じました。
奥さんの絵ばっかり描いてるし、2人で何度も海外旅行に行ってるし、勝手な解釈ですけど奥さんと2人、絵を描きながらラブラブでゆったりと暮らしていたんではないかな…と思います。
彼の絵のほかに、義理の兄や親交のあった画家の絵も展示されています。
ハンマースホイの影響を受けているので似たような絵を描いていますが、彼の絵より色や物が多く、幸せ要素が入っちゃてて退屈な絵になっていました。
やはり一貫した世界を描いたハンマースホイの個性が際立つのがよく分かります。
久々に見たこれらの美術展はいい栄養剤となりました。
上野は美術館が公園内にあるのもいいところです。
↓木々が一部色づいてました。
今回、両展示会とも音声ガイドを利用したのですが、進化しててビックリ。
フェルメール展では1枚のシート↓をもらって、その絵を専用ペンでタッチすると解説が始まる…というハイテクもの。
ハンマースホイ展では液晶画面が付いてて、関連画像が見られるようになっていました。
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