『アンドリュー・ワイエス 創造への道』展

今日は渋谷Bunkamuraザ・ミュージアムで『アンドリュー・ワイエス 創造への道』展を見ました。
081220_0148~0001
今回の展示では、鉛筆、水彩、テンペラ画だけでなく、そこに行きつくまでの習作を数多く見ることができます。
(テーマが「過程」なので習作のみの展示もあります)
彼が綿密にスケッチを重ね、画面を構成し直し、妥協なく描いている様子がとてもよく分かりました。
(「さらされた場所」のオルソン家の羽目板なんて一枚一枚数えて描いたそうです)
どれも本当に素敵でした。
彼の絵には「哀愁」が漂っています。色彩は暗くてもそこに絶望は無く、ただただせつなく胸に響くのです。
ペンシルヴェニア州やメイン州の、これと言ってドラマティックなところのない田舎の景色や人物を描いていても、彼の手にかかるとものすごく情感のある世界になります。
それは彼の対象物への愛情であるとともに、色彩やタッチの巧みさによるものだと思います。
そして彼自身が秋から冬にかけてが好き…ということで、厳寒の地の荒涼たる景色がさらにその哀愁さを強めていました。
(実際館内のVTRで流れていた現地はもっと明るく、のんびりとした田舎…という感じでした)
水彩画は比較的ノビノビと、テンペラ画は緻密に描かれています。
水彩画ですごいなと感じたのは抜き。白は色を置かずに抜いて表現しているのですが、そのバランスが絶妙でとても効果的。あれは習作を重ねていないと描けない、計算しつくされたものだと思います。
テンペラ画は、本当に緻密。
でもその緻密さにも強弱をつけているので、まったく重く感じませんでした。
彼は現在91才。今でも元気に創作していることを館内のVTRで知ることができます。
VTRの中で彼は「何かがイマジネーションを刺激したら、すぐに行動に移さなければダメ。91才だなんて言ってられない、年令は関係ないんだ」ということを言っていました。
そして今でも一週間のうち7日間絵を描いていること、芸術にルールは無いこと…など、91才の今もなお現役でいる彼ならではのありがたい言葉を聞くことができました。
その後は1月の展示に使う材料の買い出し。
ボーナス後、クリスマス前、週末…が重なってどこも人であふれていました。すっかり人酔いして帰りました。

カテゴリー: イラストレーション・アート パーマリンク