オモニの愛

先日、テレビで『母なる証明』を観た。
女子高生殺人容疑のかけられた息子の無実を信じ、真犯人を探す母のお話。
韓流ドラマに出てくるような陽気でキラキラした世界はここにはなくて、
底辺に生きる人々のギリギリの重苦しい生活が描かれている。
その上、事件解決で円満に終わる話ではないので、
観終わった後もズッシリ感やモヤモヤ感が残り、決して後味のいい映画とは言えない。
でも却ってそれがリアル。
キム・ヘジャ演じる母の演技がものすごい。
こういう人のドキュメンタリー映像でも観ているかのよう。
ウォンビンや、その他の人も役にもピッタリはまってたけど、彼女の存在感はピカイチであった。
無償の愛のとてつもない深さ。それに伴う執念。
これは韓国のオモニ(母)に限ったことではないと思える。
一途で純粋すぎるがゆえの狂気。
そんな彼女の想いが伝わってきて胸がズキズキと痛む。
「愛」と一口に言っても、その形は様々で、相手を癒し、喜ばすばかりではない悲しさ。
厄介なものだ。

冒頭の無彩色な草原でキム・ヘジャが踊るシーンが印象的。
映画全体の色彩も退廃的でよかった。
この映画も警察の捜査の甘さとか突っ込みどころは多々あるけれど、
そういう細かいことはストーリーの勢い的に必要ないのだろう。
題は原題の『MOTHER』の方が合っているように思う。
ポン・ジュノ監督のその他の作品、『殺人の追憶』 『グエムル 漢江の怪物』も観てみたい。

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