5月、6月に観た映画とフェルメール

5月、6月も何やかやと忙しく、落ち着いて映画を観る時間があまり取れなかった。
そんな中観た映画の感想。
5月に観た映画
『グエムル 漢江の怪物』(2006年・韓)
韓国では空前の大ヒットになったと聞いたのでかなり期待して観たけど、これといって新しさを感じるストーリーではなかった。漢江へ不法投棄した化学物質によって魚がモンスターに変身する様はゴジラを彷彿とさせる。
今後こんなことが現実に起こったりするかも…と思わせる世の中なのが皮肉。
恐怖だけでなくユーモアがあったり、韓国の日常とか家族愛を見せるところが他の国の映画とは違うかな。CG技術は見もの。
『八日目の蝉』(2011年)
女性はかなり感情移入できる内容だったと思う。
正妻、愛人、産みの母、育ての母、娘…。それぞれの世代のそれぞれの立場の『女』が、ものすごく巧みに描かれていて、その気持ちのどれもが胸に突き刺さった。
井上真央ちゃんは『ダーリンは外国人』より全然こっちの方がよかった。
劇団ひとりもいい感じにエロキモ男を演じている。
小豆島の美しい景色にも胸を打たれた。
『イン・ハー・シューズ』(2005年・米)
こちらも女性の気持ちが丁寧に描かれててよかった。
バリバリのキャリアウーマンだけど自分の容姿に自信の持てない姉・ローズと美しさだけが取り柄の妹・マギー。
その2人がぶつかり合いながらも姉妹の絆を取り戻していく過程がいい。マギー役のキャメロン・ディアスはまさにハマり役。
姉の家を追い出されたマギーが祖母の家に行って即めでたし、めでたしにならないところも現実的でいい。
最後も納得のいくハッピーエンドだった。
ところどころのユーモアやファッションや街並みも楽しかった。
『エクソシスト』(1973年・米)
不条理、不条理ー。
何もしてない無垢な少女に悪魔は憑依するし、悪魔払いをした神父2人も犠牲になっちゃうし。
まぁ、不条理だからこそ悪魔のしわざと言えるわけで。
今から40年近く前に作られたとは思えないクオリティ。
少女役の子もうますぎる。
『マレーナ』(2000年・伊、米)
『ニュー・シネマ・パラダイス』のジュゼッペ・トルナトーレ監督、イタリアの宝石と呼ばれる女優、モニカ・ベルッチ主演…とかなり期待できる要素だったが、観た後何だか、どよーんとしてしまった。
時代背景とか戦争とか色々理由はあるけれど、マレーナ(モニカ・ベルッチ)の立場が悲惨すぎる。
ただのストーカーとしか思えない少年レナート。幼すぎて見守るしか出来ないとは言え、本当に見てるだけで終わってガッカリ。
こっちの方が現実的とはいえ、もうちょっと美しく都合よく創作してほしかった。
男性が観たら感動する映画なのかなぁ?
『セブンティーン・アゲイン』(2009年・米)
40歳目前の男性・マイクがある日、17歳の自分に戻ってしまい…。
過去に戻るのではなく、姿形だけが17歳に戻るのがいい。私も常々、中身は今のまま10代や20代に戻ったらどうなるだろう?と思ったりするのでとても楽しめた。
ザック・エフロン演じる17歳のマイクはめちゃくちゃイケメンなんだけど、ただのモテ男で終わるのではなく、家族愛や夫婦愛を再確認しつつ丸く収まるのもよかった。親友のオタク・ネッドがユニークで笑える。
しかしアメリカの高校生活は本当に楽しそうだな。
『まほろ駅前多田便利軒』(2011年)
瑛太と松田龍平のナチュラルな演技、うまいなー。ストーリーは、残酷なことになるのでは?と恐る恐る見てた部分もあいまって意外と最後まで惹きつける。汚いオフィスとか格好とか車とかがリアル。笑える部分も結構あり。
しかし、あんな重たいモジャボサ頭が似合うのは瑛太だけだろうな。顔とスタイルが良いってお得ね。
学生時代によく行った町田がロケ地で懐かしかった。

6月に観た映画
『瞳の奥の秘密』(2009年・スペイン、アルゼンチン)
ラテンな国のイメージとは異なる、渋い映画だった。現在と過去を行きつ戻りつする手法、25年前の事件解決とともに進んでいく恋愛、カメラワーク、小物を使っての細かい演出、後で繋がっていく演出等がニクイ。
(特に暴行犯とエレベーターに乗り合わせた時の鏡を使った演出にはゾクッとした。)
前半よりも後半にグイグイ惹きつけていくお話だった。
しかし、当時アルゼンチンの政情不安が高まっていたとはいえ、学歴格差の大きさ、組織の人間の汚さ(これは大なり小なりいつの時代でもあるが)、中でも暴行殺人犯をあっさり釈放して大統領のSPにしちゃったのには驚いた。
犯人の特定の仕方もちょっと甘いかな、とは思うけど、最後の展開等、ストーリーを素直に楽しめた。
『真珠の耳飾りの少女』(2003年・英、ルクセンブルグ)
フェルメールの原画を観る前に是非観ておきたかった映画なのでうれしい。
フェルメールの世界そのままを映像化したようで本当に美しい。溜息もの。
ストーリーはフィクションらしいが、この絵にまつわるお話がこんなだったら素敵。
フェルメール役のコリン・ファースは『シングルマン』や『英国王のスピーチ』(←こちらは未鑑賞)とはまた違ったイメージで、とてもセクシー。
そして少女役のスカーレット・ヨハンソンはまさに適役。あの分厚い、半開きの唇がとてもエロティック。
直接エロいシーンは無いのに、いや無いからこその官能的な映画だった。
(特に耳にピアスの穴を開けるシーン!!)

『マウリッツハイス美術館展』
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そんなわけで映画も観たことだし、念願の『真珠の首飾りの少女』を観に東京都美術館『マウリッツハイス美術館展』へ6日(金)、行ってきた。
まだ始まったばかりだし、平日だし、雨降りそうだし、お昼時だしで空いてるだろうと思ったら大間違いであった。
入るのに30分、『真珠の…』を観るのに30分、ディズニーランドのアトラクションのごとく並ばされた。
やはり日本人に人気のフェルメール、中でも最も人気のある作品とあらば仕方ない。
オランダまで行かずとも1300円(前売価格)で観れるのだから、安いものだ。
しかし、これほど並んだことは久しく無かった。今までもゴッホ、北斎、ダヴィンチ位か。どれも会期終了間近ゆえだったけど、今回は夏休み期間も、終了間近もものすごいことになるに違いない。
そしてこちらでもフェルメール(『ディアナとニンフたち』もあり)やレンブラント、ルーベンス(フランダースの犬でネロがマリア様に母親を投影した祭壇画の下絵)以外もまぁじっくり観ることは観たが、正直どうでもいい感じ。
会場のレイアウトも『真珠の…』だけうやうやしく飾られていたし。
でもってやはりそこだけが輝いていた『真珠の耳飾りの少女』!!(照明のせいもあるけど)
本物は輝きが違う、オーラが違う!美しいぃぃ!
最前列で観ても若干距離が離れているのと、歩きながらの鑑賞なのが残念だったが、最前列ではないが立ち止まって観られる方にもう一度並んでじっくり心ゆくまで観た。
写真ではよく分からなかったピアスの金具部分や唇の光を観ることが出来た。
絹であろう服の表現、真珠の光の反射が見事だった。
映画ではフェルメールが中々売り絵を描かないので生活が苦しくなっているようにされていたけど、実際は裕福ゆえにあまり絵を描かなかったようだ。お金があるからこその高価な絵の具、フェルメールブルーと呼ばれるラピスラズリがここでもふんだんに使われていた。
この絵のモデル、映画では召使いだったが、実際はトローニーと言って特定の人物ではなく一般の人物像として描いたものだそう(架空)。
そして真珠は天然のものにしては大きすぎるのでガラスに着色したものではないか、と言われている。
現実は映画とはだいぶ異なるけれど、いまだ謎の多いフェルメールの事、もしかしたら本当に映画みたいなストーリーが隠されてたのでは…と思うとロマンチック。
会場を出たところに武井咲ちゃんが実際に着たという『真珠の…』の再現衣装が飾られていた。
中々手が込んでいる。
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絵と同じようなアングルで↓。
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東京都美術館、改修しておしゃれ&かわいくなっていた(カラフルな椅子や天井等)。
ミュージアムショップも楽しかった。
『ベルリン国立美術館展』
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『真珠の耳飾りの…』を鑑賞した後、銀座フェルメールセンターに赴いて「今日はフェルメール三昧!」と思っていたのだが、ここには『真珠の首飾りの少女』が来ていると看板に出ていたので急遽観ることにした。
こちらは思いのほか彫刻作品が多かった。普段あまり観る機会が無いので新鮮。
ものすごい細かい木の彫刻とか、半立体の大理石の彫刻とか面白かった。
ボッティチェッリやラファエッロ、ミケランジェロ等の素描も興味深かった。図案や習作なんだけど、そこは偉大な芸術家。十分作品として成立していた。
青染紙に描かれた素描、白が効果的できれいだった。
他にもルーベンスやベラスケスもあった。
こちらのフェルメールは大きな混雑も無く、ゆったり観れた。暗い影の中の微妙な色の違いで表現する素材、磁器の光の反射、真珠の鈍い光の反射がここでも素晴らしい。
でもやっぱり『耳飾りの…』の方が魅力的だ。ゾクゾクする色気を感じるからだろうか。
その後、フェルメール銀座にも行こうと思ったけど、足もくたびれたし、時間も時間だったので後日改めて行くことにした。
同じ内容で池袋でも開催中らしいので、間に合えばそちらに行こうと思う。
それにしても上野公園、大きいカフェ(ひとつはスタバ)が出来てたり、だいぶイメージチェンジしてた。

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